家事按分のやり方
家賃・電気・通信費を経費にする割合
自宅で副業やフリーランスの仕事をしていると、家賃・電気代・スマホ代などは 仕事とプライベートが混ざった支出になります。このうち仕事で使った分だけを 合理的な割合で取り出して経費にするのが「家事按分(かじあんぶん)」です。 費用ごとの割合の出し方、計算例、帳簿へのつけ方、そして税務署に説明できる根拠の残し方まで、順番に整理します。
家事按分とは?
家賃や電気代のように、仕事にもプライベートにも使う費用を「家事関連費」といいます。 家事関連費は全額をそのまま経費にはできませんが、仕事で使った部分を合理的に区分できれば、その分だけを必要経費にできます。 この「仕事分だけを取り出す」作業が家事按分です。
たとえば家賃10万円のうち、仕事に使っているスペースが部屋全体の25%なら、按分後の経費は 10万円 × 25% = 2万5,000円。残りの7万5,000円は生活費(経費にならない)として扱います。
按分の基本ルール(区分できることと、根拠を残すこと)
所得税法では、家事関連費のうち必要経費にできるのは「業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合のその部分」とされています。 ポイントは次の2つです。
- 合理的な基準で割合を決める … 家賃は「床面積の割合」、電気・通信費は「使用時間や使用日数の割合」など、誰が見ても納得できる基準を使います。
- 根拠を記録して残す … 「なぜこの割合なのか」を後から説明できるよう、間取り図・使用時間のメモ・計算式などを保管します。割合に絶対の正解はなく、説明できることが最も大切です。
なお青色申告では、取引の記録などに基づいて業務上必要だと明らかにできる部分が認められます。白色申告でも、合理的に区分できれば按分は可能です。 いずれにしても「区分の根拠」を残しておく点は共通です。
費用ごとの按分の基準(早見表)
| 費用 | よく使う按分の基準 | 考え方の例 |
|---|---|---|
| 家賃・地代 | 床面積の割合 | 仕事に使う面積 ÷ 部屋全体の面積 |
| 電気代 | 使用面積、または使用時間 | 仕事スペースの面積割/1日のうち業務に使う時間の割合 |
| 水道・ガス | 業務での使用実態 | 在宅ワーク中心ならごく一部のみ(使わない業種は対象外のことも) |
| 通信費(ネット・スマホ) | 使用時間・使用日数の割合 | 仕事で使う時間や日数から合理的に算定 |
| 車(ガソリン・保険・税金・減価償却) | 走行距離の割合 | 業務での走行距離 ÷ 総走行距離 |
※ 割合は一例です。実態に合わせ、説明できる基準で各自が算定してください。水道・ガスは在宅でも業務との関連が薄いことが多く、無理に計上しないのが無難です。
① 家賃・地代(床面積で按分)
もっとも使いやすいのが床面積による按分です。仕事専用または主に仕事で使うスペースの面積を、部屋全体の面積で割ります。
計算例(家賃8万円・40㎡のうち10㎡を仕事に使用)
按分割合 → 10㎡ ÷ 40㎡ = 25%
経費にできる家賃 → 80,000円 × 25% = 20,000円/月
年間 → 20,000円 × 12か月 = 240,000円
面積で分けにくい場合は、「1日のうち仕事部屋を使う時間の割合」など別の合理的な基準でも構いません。 敷金(返ってくるお金)は経費にならない点に注意します。
② 電気・水道・ガス(面積または時間で按分)
電気代は、家賃と同じ床面積の割合で按分するか、1日のうち仕事に使う時間の割合で按分するのが一般的です。 たとえば在宅で1日8時間働くなら、ざっくり「8時間 ÷ 24時間 ≒ 33%」といった算定も考えられます(あくまで概算で、実態に合わせて調整します)。 水道・ガスは、業務との関係が薄い業種では計上しないか、ごく一部にとどめるのが無難です。
③ 通信費(インターネット・スマホ)
自宅のネット回線やスマホ料金は、仕事に使う時間や日数の割合で按分します。 仕事専用のSIMや回線であれば全額を通信費にできますが、私用と兼ねる場合は合理的な割合で分けます。 「平日は主に仕事で使う」など、自分の使い方を説明できる根拠をメモしておきましょう。
④ 車(ガソリン・自動車保険・減価償却)
車を仕事にも使う場合は、走行距離の割合(業務での走行距離 ÷ 総走行距離)で按分するのが分かりやすい方法です。 この割合は、ガソリン代・自動車保険料・自動車税・車検費用・減価償却費などにまとめて使えます。 走行記録(業務で使った日・距離)を残しておくと根拠になります。
帳簿へのつけ方
家計用の財布や口座から払った経費を、事業の帳簿に取り込むときは「事業主借」を使います。 逆に、事業用の口座からプライベートの分(按分で経費にならない部分)を払ったときは「事業主貸」で処理します。
実務では、毎回その場で按分するより年末(または毎月末)に支払総額へ割合を掛けてまとめて計上する方が簡単です。 たとえば「年間の電気代の合計 × 業務割合」を1回で経費に振り替えます。会計ソフトを使うと、登録した按分割合で自動計算できます。
注意点
- !割合は「説明できること」が第一です。明確な正解はありませんが、根拠なく高すぎる割合(例:家賃の大半を経費化)は税務調査で否認されることがあります。実態に即した合理的な割合にしましょう。
- !根拠資料を残しましょう。間取り図、仕事スペースの面積、使用時間のメモ、走行記録など、割合の計算過程が分かるものを保管しておきます。
- !持ち家の住宅ローンは、元本部分は経費になりません。経費にできるのは固定資産税・火災保険料・建物の減価償却費・ローンの利息部分などを面積按分した分です。住宅ローン控除を受けている場合、事業割合によっては控除に影響することがあるため、税務署や税理士に確認してください。
- !持ち家を配偶者など生計を同じくする家族が所有している場合も、一定の費用は按分して経費にできることがあります。扱いが複雑なため、迷ったら専門家に相談しましょう。
根拠・出典
所得税法 第45条(家事関連費等の必要経費不算入等)/所得税法施行令 第96条(家事関連費)
国税庁 タックスアンサー No.2210「やさしい必要経費の知識」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
かんたん早見
家賃=床面積割/電気・通信費=面積または使用時間割/車=走行距離割。割合に正解はないが「根拠を説明できる」ことが必須。記帳は事業主借・事業主貸を使い、年末にまとめて計上が楽。
按分前の支出もまず記録から
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